ただ質問する勇気~誘導尋問の制限(民事裁判)

急いでいるとき、相手の答えを決めつけるような質問をしそうになります。たとえば、「仕事は火曜日がお休みでしたよね」(「はい」を想定。)これはなぜかと言うと、時間を短く済ませたいからです。答えが予想どおりなら、そのやりとりは1往復で終わって、「では次回は再来週の火曜日の〇時にしましょう」などと進めますからね。

 

でも、逆の立場で、答えを決めつけられて質問されるのは気持ちよくないことがあります。見当はずれならもちろん、合っているようで少し違うみたいなときです。たとえば、「えっと、第2と第4は休みですが、第1と第3は半休です」とか「4月までは火曜が休みですが、5月からは変わります」とか。先方は急いでいるなと思うと、期待に沿うように答えてあげたいですが、正確に言いたいなと思うと、むずむずします。

 

そう考えると、「はい」か「いいえ」を求めるような質問は、ぴったり当てはまらない場合、回答する側に窮屈な思いを抱かせて、円滑なコミュニケーションを妨げる力がありますね。「はい」か「いいえ」に限定するのだから正確な情報が得られそうでいて、常にではなく、質問する側と回答する側に共通認識があればこそと思います。

 

だからでしょうか。民事裁判において「はい」か「いいえ」で答えられるような質問で証人を尋問することは、「誘導尋問」として制限されています。

民事訴訟規則113条2項】当事者は、次に掲げる質問をしてはならない。ただし、第二号から第六号までに掲げる質問については、正当な理由がある場合は、この限りでない。 一号(略)  二号 誘導尋問  三号以下略

 

完全禁止ではありませんが、裁判で証人尋問する意味は証人自身の記憶を話してもらうことにあるので、質問する側が決めてかかってはダメですよ、ということですね。

 

 

人は話をしているとき、他人の話を聞いているときより満足度が高いと言われます。「はい」か「いいえ」で答えられない質問は、相手の好きに話を広げるチャンスを提供します。まぁ、裁判において、特に相手方の証人にのびのびと喋ってもらうのはリスキーなのでさておきますが、良い関係を築きたい相手となら、どんな答えがきても受け止める勇気をもって、質問したいなと思います。