T山のリフトとケーブルカー、組み合わせた往復割引がないのはなぜ

相方と山に行きました。山と言ってもリフトとケーブルカーがあり、どちらかを使えば徒歩で登るルート*1を大幅にカットインできます。

 

私はリフトが好きです。空を飛んでいるみたいで、風を感じられて、木や草や土の匂いが迫ってきて、運が良ければ頭上に翼を広げて舞う大型の鳥を見ることができます。往復ともリフトに乗りたいなと思っていました。

 

ところが、相方は「ケーブルカーとリフト、両方乗りたい」と言うのです。困りました…私のリフト推しはゆらぎようがないのです。でも、相方と長くうまくやっていきたいので、意見が異なるときは譲るようにしています。「行きはケーブルカー、帰りはリフト」で相方と合意しました。

 

往復ともリフトなら、片道490円のところ往復割引で950円で乗れます。往復ケーブルカーでも、同じく片道490円のところ往復割引で950円になります。つまり、リフトでもケーブルカーでも、往復切符を買えば30円トクになります。往路も復路も15円ずつ割り引ける計算になります。

 

きっと、運営会社にとって、それぞれ往路の段階で復路の乗客を囲い込めれば、そのぐらいの割引は痛くないのでしょう。そうであれば、ケーブルカーとリフトを往復で組み合わせても950円で乗れることになりそうです。

 

ところが、ケーブルカーとリフトを組み合わせると、往復割引はないのです。それどころか、往復切符(往復で買う)という概念すらありません。登りの窓口、下りの窓口で、それぞれ片道切符を買うことになります。

 

どうしてなのかな?と帰り道、相方と話しました。「運営会社が別だからじゃないかな」と張り切って私は言いました。簿記の勉強をしていたとき「株式会社が決算書を作るのは株主のため」と習いました。別の会社なら、ケーブルカーとリフトの切符代金はそれぞれの売上としてそれぞれ計上しなければなりません。やたらに往復組み合わせられないのは無理もないと思いました。

 

ほかにも、〇切符売り場(登り)はケーブルカーとリフトで隣なのに取り扱いがくっきり分けられていたこと*2 〇ケーブルカーにもリフトにも他方の魅力を伝えるような広告などがなかったことから、運営会社は別なのだろうと考えました。

 

そういう内容のブログを作ろうと思っていました。

 

しかし、ホームページで確認したところ、ケーブルカーもリフトも同じ会社が運営していました!事業概要欄に「鋼索鉄道(ケーブルカー)、特殊索道(二人乗り観光リフト)(略)」と分けて記載されています。

 

用語を知らなかったので調べたところ、「鋼索鉄道」は鉄道事業法施行規則4条6号が定める鉄道の種類の一つで、「特殊索道」は鉄道事業法施行規則47条2号が定める索道の種類の一つでした。

 

「索道」って何?「鉄道」も知っているけど正確には何?と思いましたが、鉄道事業法には定義規定はありません。国土交通省中国運輸局のホームページ(http://wwwtb.mlit.go.jp/chugoku/tetsudou/shitsumon.html)によれば、鉄道とは「原則として、専用の敷地にレールを敷設し、運搬具を使用して旅客や貨物を運送する施設全体」を指し、索道とは「架設した索条(鋼製等のロープ)により人または物を運送するもの」をいうのだそうです。そして、「鋼索鉄道」は、関東鋼索交通協会のホームページによれば「山頂側の巻上装置の滑車にまき付けた1本の索条(鋼索)の両端に接続した2台の車両を、斜面に設けたレール上の車両をつるべ式により、交互に昇降運転をするもの」とされていて*3、「特殊索道」は、先に述べた鉄道事業法施行規則47条2号で「外部に解放された座席で構成されるいす式の搬器を使用して旅客を運送する索道」と定義されていました。

 

鉄道の種類や索道の種類は、鉄道事業法で鉄道事業、索道事業の許可を受けようとする者が国土交通大臣に提出しなければならないとされている申請書(同法4条1項、33条1項)の記載事項の一つです(同法4条1項6号、同法33条1項2号)。リフトとケーブルカーの運営会社のホームページでは「安全報告書」も公開されていたので見たところ、ケーブルカーとリフトそれぞれについて、さまざまな「輸送の安全確保」に関する点検や訓練がなされていました。

 

こういった、法手続や点検や訓練が別であるとか携わる社員さんが別であろうと思われることは、往復割引がない決定的な理由とは考えにくいです。頑張ればどうにか実現できそうな気がします。

 

でも、運営会社にとっては「徒歩を選ばれさえしなければ(リフトかケーブルカーどちらかを選んでもらえれば)売上が確保できるのだから十分良い」のかなと思います。「組み合わせて往復割引を実現してほしい、そうでなければどちらにも乗らない」という利用者の声はとても少なそうです。そのような状況で往復割引を導入するにはコストがかかる点*4が問題なのかなと思います*5

*1:「案内板によれば「所要約40分」とされています。私は歩いたことがないので実際のところはわからないですが、リフトorケーブルカーを降りた後に登る距離を考えると、ここでの体力温存は大きいです。

*2:ケーブルカーの窓口で「リフト」と言っても「そちらです」と隣を案内されます。片方だけ列ができていても、空いている方で買うことはできません

*3:定義規定が見つけられませんでした

*4:少なくとも法的な整備や券売機・窓口体制の変更が必要になると思います

*5:まったくの私見です。